文化遺産に申請したいと思うほど最高の合唱演奏会=佐藤正浩氏 早稲田は、小林研一郎指揮、140名で「水のいのち」を壮大に歌い上げる 第19回東西四大学OB合唱連盟演奏会が6月23日(日)午後、改装なった東京芸術劇場コンサートホールで行われ、超満員に膨れ上がった聴衆はそれぞれの熱演に酔った。合同演奏で「秋のピエロ」を指揮した佐藤正浩氏は、開演直前のリハーサルで「各団体のリハを聴かせてもらったが、各校とも実に素晴らしい。日本最古を誇る伝統の四大学男声合唱団の一人一人が、この演奏会にかける強い思いが伝わってきて興奮した。こんなに充実した演奏会はめったにない。世界遺産に申請したいと思うほど、日本が誇るべく文化」と挨拶して大きな拍手を浴びた。演奏会は総勢400余名が勢揃いしたエール交歓から熱気が充満した。【Latvija編集室 徳田浩=稲門グリークラブ】 エール交歓(400余名がステージに勢揃い) 【各団体の演奏曲目とオンステ数(パンフ掲載数)】 クローバークラブ(同志社) 『男声合唱のための「おらしょ」かくれキリシタン3つの歌』作曲:千原英喜 指揮:小林香太 オンステ数:90名 ※200年続いたカクレキリシタン信仰の苦しみ、悲しみ、夢、希望、情熱などを歌い上げた壮大な作品、同志社ならでは魂の浄化を感じさせせる熱演・名演だった。 慶應義塾ワグネル・ソサィエティーOB合唱団 『チャイコフスキー歌曲集』 編曲:福永陽一郎 指揮:佐藤正浩 ピアノ:石山英明 オンステ数:105名 ※哀調を帯びた美しいメロディーを見事なロシア語で歌い上げた。テノールの美声、ぶ厚いハーモニー、とりわけ佐藤指揮者の音楽作りが秀逸だった。 新月会(関西学院) 『Old American Songs』 編曲:Aaron Couland 指揮:辻伸高 ピアノ:細見真理子 オンステ数:77名 ※見事なリズム感、ハーモニー、英語で、洒落たアメリカンソングスの世界に引き込み、ワクワクする楽しさを満喫させる充実して演奏。男声合唱の醍醐味を感じた。 稲門グリークラブ(早稲田) 『男声合唱組曲「水のいのち」 詩:高野喜久雄 曲:髙田三郎 指揮:小林研一郎 ピアノ:大室晃子 オンステ数:147名 ※さて早稲田。現役グリーが40年余にわたってご指導を仰いだ小林研一郎氏を、OBの稲門グリーが初めてお招きして「水のいのち」を演奏することになり、3月から始まった練習に若い平成卒年代37名を含む147名が参加した。そして、小林先生を練習にお迎えするかなり前から、ほぼ全員が暗譜を果たしていた。若い練習指揮者の佐藤拓君(平成15年卒)が、この大合唱団を見事にまとめ上げた。小林先生が振る「水のいのち」を様々な音源から詳細に研究し、先生のどんな要請にも即座に対応できるよう万全の備えをした。ところが先生は、これまでと全く違う「水のいのち」を作り上げた。140人だから成しえる壮大な水の輪廻と魂のドラマ…、3回の練習を重ねるにつれて、メンバー全員がこれまで全く経験したことのない世界へ引き込まれた。現役が残した男声合唱の名演とは全く違う「水のいのち」が、前日のゲネプロまで更に改良を加えられた。本番は私の65年の合唱歴の中でも最高に感動的な演奏になった。演奏が終わり、先生が両親指を立ててニッコリ微笑んだ時は将に至福の瞬間だった。歌う歓びを満喫した。そして涙が出てきた。小林先生と、2人の先輩を含む140人の稲グリ仲間に心から感謝した。9月23日にサントリーホール(コバケンが振る稲門グリー演奏会)で再演するが、また違う「水のいのち」になるのではないかという気がする。 ※多くの友人から激賞のメールを頂いた。ありがとうございました。 合同演奏は新月会の山田伸也氏が振る「斎太郎節」、ワグネルの須田和宏氏が振る「ソーラン節」、クローバーの小林香太氏が振る「五木の子守唄」、稲門の佐藤拓氏が振る「最上川舟歌」とお馴染みの日本民謡を歌い、圧倒的な迫力で会場を魅了した。ソリストはそれぞれの合唱団代表が務め絶賛を博した(稲門の“最上川舟歌”は武内正氏)。最後に、昨年5月に他界された畑中良輔先生を追悼して「秋のピエロ」を歌い上げた。350名を意識した佐藤正浩氏の指揮は、これまで経験したことのない重厚なピエロの世界を具現した。 次回は2年後に新月会が幹事で関西で開催される。
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