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【8月12日】ラトビア人作曲家G・ペレーツィスのこと PDF プリント メール
作者 webmaster   
2012/08/12 日曜日 14:33:03 JST

 当協会会員のピアニスト、北條陽子さんが、5月のサロンコンサートでラトビア人作曲家、ゲオルクス・ペレーツィスのピアノ組曲第1番及び第2番を本邦初演して注目を集めたが、日本ではまだ馴染みの浅いペレーツィアスに関して、同氏と親交がある菅野開史郎氏(ラトビア大学人文科学部講師)が記された解説を掲載する。ペレーツィスの作品は北條さんがリガでの演奏会で組曲第4番などを演奏し、その時のCD「ラトビアの印象から~ピアノリサイタル・イン・リガ」に収録されている。この時の演奏はペレーツィス自身も絶賛した。(latvija編集室) 

 

ペレーツィス氏のこと                                                 

                                           菅野開史朗

 私が初めて出会ったゲオルクス・ペレーツィス氏の音楽は、世界的ヴァイオリニスト、ギドン・クレーメルのCDアルバム「わが故郷から―バルトの音楽」に収められた「にもかかわらず」という謎めいたタイトルの、独奏ヴァイオリン、ピアノと弦楽合奏のための協奏曲であった。現代音楽とは思えぬ、豊かなメロディーに溢れたその 曲を通して、私は見知らぬ作曲家のイメージを勝手に膨らませた。そして1999年夏、留学したラトヴィアの首都リガでペレーツィスその人の知遇を得る機会に恵まれ、さらに2003年夏にはJMLセミナー入野義朗音楽研究所において、彼の音楽を日本の友人知己に紹介する栄を担ったのである。


 ペレーツィス氏は1947年、ラトヴィア人を父に、ロシア人を母としてリガで生まれた。当時、この国はソ連邦の一部を成していた。彼自身敬虔な東方正教会の信者であるのは、そのような出自と無縁ではあるまい。長じてモスクワ音楽院に学んだ彼の専門はバロック以前の対位法の研究だったが、アルメニア人のアラム・ハチャトゥリアンについて作曲も修めた。因みに、学窓を同じくするギドン・クレーメルとの親交は深く、彼のためにいくつも作品を捧げてきている。

 彼らの精神的土壌を為すラトヴィアの音楽は、ドイツ、ロシア双方と強い結びつきを保ってきた。まずドイツに関しては、ベートーヴェンの親友、カール・アメンダの存在が挙げられる。楽聖がその初期弦楽四重奏曲の作曲にあたって教えを請い、消えゆく聴力への不安を最初に打ち明け相談したというこの人物は、現在のラトヴィア西部、クルゼメ地方の出身であった。その墓は今も同地にある。また、リヒャルト・ワグナーは短期間ながらリガに住んだことがあり、その間オペラ『リエンツィ』の作曲に取り組んだといわれ、彼の名を冠したワグナー・ホールには、ベルリオーズ、クララ・シューマン、シャリャーピンなど錚々たる音楽家たちが演奏に訪れている。

  一方、ロシアとの結びつきはといえば、ラトヴィアの音楽家たちがそこで教育を受けたばかりでなく、大きな足跡も残していることにある。現在ペレーツィス氏が音楽理論の教授を務めるラトヴィア音楽アカデミーの創設者で初代学長ヤーゼプス・ビートゥァルスは、ペテルブルク音楽院で作曲科の教授として活躍した。ペレーツィス氏本人は自らの作曲スタイルについて、民族音楽を基盤に置いてはいない、としばしば語っているが、本当にそうだろうか、と私はそのまま鵜呑みに出来ないでいる。 実際、彼の作品リストにはラトヴィア民謡を児童の音楽教育向けに編曲したものがあり、楽譜も出版されている。その作品の多くが、親しみやすい旋律に彩られている。しかし日本で紹介されることはなく、辺境文化研究家の武田洋平氏がNHKラジオのトーク番組で、前出の「にもかかわらず」のサワリを紹介したに過ぎない。今回、北條陽子氏のリガでのリサイタルの模様が実況録音CDとして世に出ることは、この「わが道を往く」作曲家ペレーツィスの世界を広く日本の音楽ファンに知ってもらう上で、極めて有意義なことと言えよう。

  ペレーツィス氏は2004年秋、脳卒中で倒れ周囲を大変心配させたが、僅か数ヶ月で完璧に回復、その後も次々と新作を発表し、いよいよ意気軒昂である。中でも200611月初演の『ラトヴィア・レクイエム』は演奏時間が2時間弱、混声合唱にオルガンという大作であり、今後ますますの活躍を予感させるに充分であった。(かんの・かいしろう 国立ラトヴィア大学人文科学部講師、元・在ラトヴィア日本大使館専門調査員) 

最終更新日 ( 2012/08/12 日曜日 14:38:42 JST )
 
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