山脇卓也指揮の一般女声合唱団 メンバー19名による透明なハーモニーと豊かな音楽表現を満喫 2月4日 淀橋教会内小原記念堂 東京純心女子大学音楽部合唱団の元メンバーが、卒業後も山脇卓也指揮者の下で歌い続けたいと2010年3月に誕生した若々しい合唱団。どこかのOG合唱団ではなく、中学・高校・大学を卒業してからも歌い続けたいと願う人々や、仕事、出産、育児などで一度離れた人々にも幅広く呼びかけたもので、練習は毎週日曜日の夜。めきめき力を付け、2011年全日本合唱コンクール東京大会一般A部門で銀賞を受賞した。2月4日の第1回演奏会にオンステしたのは19名で、見事に統一されたノンビブラート発声、完璧なピッチによる透明極まりないハーモニーと豊かで確かな表現力で、超満員に膨れ上がった聴衆を完全に酔わせた。若さに溢れ、限りない可能性を感じる合唱団。その上、メンバー一人一人の純粋で温かい人柄が伝わり、心が洗われる気がした。“世の中に溢れている素晴らしい女声合唱曲を歌う”という合唱団のコンセプト通り、この日のプログラムは極めて多彩で贅沢な内容だった。コンクール金賞常連「お江戸コラリアーず」女声版の誕生を予感したが、山脇指揮者の力量を改めて高く評価したい。 第1ステージは、ルネッサンス期の作曲家から松下耕に至る新旧の宗教曲を5曲。完璧なラテン語発音と、ぶ厚い純正ハーモニーが会場を敬虔に包み込んだ。前半の3曲は団長(創始者)の米塚美菜子が指揮した。(オルガン:藤田直子) 第2ステージは、三善晃のオリジナル女声合唱曲集「木とともに人とともに」(詩:谷川俊太郎)。かなりの難曲(全4曲)だが一糸の乱れもなく、詩と音楽が意図した心を色彩感豊かに表現した。この作品に取り組んだメンバーの純粋な心(ぴゅあはーと)が感じられた。(ピアノ:須永真美) 第3ステージは、「“歌おうNIPPONプロジェクト”より」と題したオムニパス。“365歩のマーチ”“Tomorrow”などのポップス4曲と、佐藤賢太郎、相澤直人のオリジナル作品を歌い被災地へ熱いエールを贈った。アンコール曲を含むオリジナル作品が聴く人の心を打った。演奏会のサブタイトル「前へ」は、冒頭に歌われた佐藤の感動的な作品のタイトルから名付けられた。最後に歌われた相澤作品「歌われて」も秀曲で歌う幸せを共感できた(アンコールも同氏のオリジナル「ぜんぶ」)。このステージはポップス曲を加えて楽しい雰囲気を醸し出したが、欲を言えば、これらの作品は暗譜で歌わないと客席との一体感にやや消化不良が残る(練習時間不足だったか?)。(ピアノ:須永真美) 会場が狭くて音が響きすぎる嫌いがあった。ステージがなく指揮者も中央通路の2列目辺から指揮した。アットホームな雰囲気を満喫できたが、次回(2013年4月予定)はメンバーも増えるだろうし、本格ホールでもっと多くの聴衆に真価を問うて欲しい(この日も客席後方と全ての通路に補助椅子が追加されて立錐の余地もなかった)。 アルトに男性が一人いたのがユニーク。男声合唱団「お江戸コラリアーず」の定演でも女性メンバーを見かけたが、“来るものは性別を問わず!”という山脇指揮者のポリシーか?(徳田浩記)
写真は2011年9月に東京都コンクール銀賞獲得の時に撮影したもの
|