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【8月2日】世界で活躍するラトビア人演奏家たち PDF プリント メール
作者 webmaster   
2010/08/02 月曜日 14:45:35 JST
 

 

 現在世界で活躍しているラトビア人演奏家たちは、「私は、ラトビア出身です」と人々に向かって言う事を恥ずかしがることはない。

(掲載)「ディエナ」紙  (記事)イネセ・ルーシニャ

(翻訳)森川はるか(会員) (監修)田摩 勇 (当協会理事) 

 今日では演奏会や演奏会用ポスターなどで、どこの国の演奏家なのかと確かめることは、必要ないことである。なぜなら大物演奏家は、世界中を廻り、世界の市民権を得ているということが、確かな自己証明であるからである。さらにある音楽作品が、一つの国土や国家に帰属していることを証明すること不可能なこともある。例えば別々の国の出身者である両親の間に生まれた演奏家かも知れないし、外国で学んだかも知れないし、他の国へ移住したかも知れない。また他の国の市民権を得ているのかも知れない。この場合、いったいこの演奏家は、どの国の出身といえるのでしょうか。

 

 かの世界的に有名なチェリスト、ロストロポーヴィチは、市民権について訊ねられた時、「私は世界の市民である」と答えました。多くの傑出した個人は、自らの立場をこういった形で見直しており、だれからも非難されることはない。しかし今でもラトビア人演奏家たちは、そのようなことを言わない。もう彼らは、記者会見やインタビューの中で、「私はラトビア出身である」ということを他の人たちに気づかせることを恥ずかしがることはないのです。

 

 彼らはもはや生まれ故郷に住んでいるわけではなく、また戻ることもほとんどありません。又誰もが世界的な指揮者マリス・ヤンソンスが、ラトビア出身であること知っています。そして彼の指導のもとでオランダの「ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団」を世界のトップクラスのオーケストラにしました。世界的な影響力を持つイギリスの音楽誌「グラモフォン」の評論家たちは、あの聳え立つ「ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団」の地位を脅かしていると言っています。

 

 また同じようなことですが、ヤンソンスの優れた弟子である指揮者アンドリス・ネルソンス(今年11月ウィーン・フィルとともに来日予定)の音楽的才能、技術、カリスマ性などについて、数年前のファイナンシャル・タイムズ誌が、「ネルソンスは、すべてを持っているようだ」と高く評価しています。

 

 彼は、イギリスのバーミンガム市交響楽団の第2シーズンを指揮しています。また昨年には、ロンドンの「プロムス」、ザルツブルク音楽祭、ルーツェルン音楽祭やベルリン音楽祭にデビュー。またイギリスのコヴェント・ガーデン王立歌劇場、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場など世界の主要な歌劇場にもデビューを飾りました。今年は、バイロイト音楽祭でワーグナーの歌劇「ローエングリン」でデビューが予定されています。

 

 続いては、ラトビアを代表する歌姫エリーナ・ガランチャは、メトロポリタン歌劇場でのビゼーの歌劇「カルメン」再演で主役を歌っています。彼女は、アメリカとヨーロッパで、2009年のベスト歌手に選ばれた他、ドイツのエコー・クラシック賞など受賞しています。このエコー・クラシック賞には現在活躍中のバイオリニスト、バイバ・スクリデとピアニストのラウマ・スクリデがすでに受賞しています。

 

 今後期待されるオペラ歌手には、すでにアメリカやヨーロッパで国際的な実績を積んでいるソプラノのマイヤ・コヴァリェウスカやマリナ・レベカ、そして素晴らしい声を持ったテノールのアレクサンドルス・アントニェンコ。さらにすでにミラノ・スカラ座やウィーン国立歌劇場などで急速に人気を集めているソプラノのクリスティネ・オポライス。またコヴァリェウスカ、ガランチャ、アントニェンコとネルソンスが、フランスのエクサン・プロヴァン音楽祭にデビューすることと来年のメトロポリタン歌劇場に出演することが予定されており、大変楽しみです。

 

 またネルソンスとコヴァリェウスカが、メトロポリタン歌劇場でプッチーニの歌劇「トゥーランドット」で共演するとともに、ネルソンスが、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団へのデビューの時に、バイバ・スクリデもソロ奏者として出演する予定です。

 

 イネーセ・ガランテは、熟成されたワインのようだと高く評価されています。またバス・バリトンのエギールス・シリンシュは、ヨーロッパでもっともワーグナーのオペラを理解している歌手の1人として認められています。大変難しいコンクールの一つとして知られるベルギーの「エリーザベト王妃国際コンクール」で優勝したバイバ・スクリデとヴィネタ・サレイカは、ヨーロッパだけでなく、アメリカやアジアへも演奏旅行をしています。クリスティーネ・ブラウマネは、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団の主席チェロ奏者として、またマルタ・スドラバは、ギドン・クレーメル率いるアンサンブル「クレメラータ・バルティカ」のメンバーとして活躍しています。「クレメラータ・バルティカ」は、バルト諸国の優れた演奏家たちを集めたアンサンブルで、まさに素晴らしいバルティック文化大使そのものであり、彼らのCDは、グラミー賞を受けています。

 

 そして本国ラトヴィアで、稀にしか演奏会を開かない世界的な演奏家がいます。例えばピアニストのラウマ・スクリデ、ヴェスタルズ・シムクス、チリ在住のアルマンズ・アーブオルスたちです。後者の2人バルセロナのマリア・キャナスル国際音楽コンクールで入賞しています。コントラバス奏者のグナールス・ウパトニエクスは、2009年秋の「ミュンヘン国際音楽コンクール」で大衆賞と審査委員賞を受賞しています。このコンクールは、世界のコンクールの中でも大変厳しい審査をすることで知られており、第1位をなかなか出さないことでも有名です。

 

 オルガニストのイエヴァ・アプカルナは、現在ベルリン・フィルハーモニーで催される「オルガン・コンサート」に定期的に出演しており、故名指揮者ヘルベルト・フォン・カラヤンにも気に入られていました。また3月にはサンフランシスコのシンフォニーホール、ドイツのケルン大聖堂やオランダのハーレムでリサイタルを開いています。

 

 また今年の後半彼女は、マーリス・シルマイス率いる合唱団「カメール」とともにブダペストで演奏会を開く予定です。またアイラ・ビルズィーニャが指揮する「リガ大聖堂少女合唱団」は、世界のアマチュア合唱団が競い合うヨーロッパのグランプリ・コンクールでの活躍が期待されています。シグヴァルツ・クャヴァが指揮する「ラトビア放送合唱団」とカスパルス・プットゥニンシュが指揮する「ラトビア国立アカデミー合唱団」は、しばしば世界最高の合唱団と評され、とても人気の高い合唱団です。ともに昨年オランダの「アムステルダム・コンセルトヘボウ」でのデビュー・コンサートを開きました。またラトヴィア国立アカデミー合唱団は、今年オランダ放送交響楽団の演奏会形式によるワーグナーの「パルシファル」に参加する予定です。そして来年は、「ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団」が、世界の著名な指揮者を迎え、マーラーの生誕150年と没後100年を記念して計画されている「グスタフ・マーラー・シリーズ」に参加することが決まっています。すでにこの合唱団は、今年の3月4日にアムステルダム・コンセルトヘボウ」で行なわれた「マリス・ヤンソンス指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団」演奏会で、一般に「千人の交響曲」と呼ばれているマーラー作曲の「交響曲第8番」のステージに出演しています。さらに「ヘルシンキ音楽祭」への出演や「ヘルシンキ交響楽団」との共演、また1115日にニューヨークの「リンカーン・センター」で、アルヴォ・ペルトとバッハの作品を歌うことになっています。

 

 「ラトヴィア国立歌劇場とそのバレエ団」は、ヨーロッパはもちろんのことロシアやアジアまで演奏旅行を行い、高い評価を受けています。今年ラトヴィア国立交響楽団は、2度来日し、ラトヴィア出身の世界的なチェリスト、ミーシャ・マイスキーをゲストに迎え演奏します。

 

 ここで昨年起こった大変面白いことを一つご紹介しましょう。かつてハンブルク州立歌劇場で活躍していたラトヴィア出身のオペラ歌手マリナ・レベカは、インガ・カルナの代役としてヴェルディの歌劇「椿姫」のタイトルロールを歌いました。そして今度は、昨年マリナ・レベカの代役として、クリスティネ・オポライスが同じ役を歌ったというエピソードがありました。

 

 読者は、この小さな国ラトビアからこのような多くの優れた演奏家を輩出している現実を知ったならば、きっと驚くことでしょう。

 しかし他の国々が輩出している世界的な演奏家たちの内、ラトヴィアの演奏家たちが、どのくらいの割合をしめているのかについて、正確な数字は持っていません。それに他の国でそのような数字を自慢げに発表している所はありません。現在ラトヴィアは、景気の失速や高い失業率で知られていますが、それと同時に優れた音楽家たちを生み出している高い輩出率を持っているということを知れば驚かないでしょう。これは、必然かそれとも偶然かは分かりません。我々の精神性が何か役割を果たしているのか、生活習慣もしくは過去の遺産が生み出すエネルギーなのか、そして国家予算が削減される状況のもとで、ラトヴィアの音楽教育は、どのような役割をはたすのか?大変興味深いところです。   

最終更新日 ( 2010/08/08 日曜日 12:50:59 JST )
 
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