当協会の第3回指揮者交流プロジェクト(2007年10月~11月・リガ)で、現地の合唱界から高い評価を受けた山本健二会員(指揮者・バリトン歌手・NPO日本童謡の会常任理事)がこのほどCD[靴が鳴る]をリリース、大澤寛之会員から感想が届きましたので掲載します。 山本健二さんの新作CD「靴が鳴る」を聴いて 大澤 寛之(早稲田大学グリークラブOB) この度山本健二さんがNPO法人日本童謡の会から新作CD「靴が鳴る」を出されましたので、聴かせていただきました。私の思っている童謡の条件をこれほど完全に備えているCDは今まで聴いたことがありませんので、思いの程を少し書かせていただきます。 童謡ですから当然主たる対象は子供でしょうが、このCDは大人も充分に楽しめます。童謡とは「童謡詩による歌曲」が正解で、内容において普通の歌曲に劣るものであってはなりません。童謡詩とは子供の目線で、子供の言葉によって書かれた詩であって、普通の詩となんら変わるものではありません。曲もまた手を抜かず、子供に媚びず、大人の鑑賞にも堪えるものでなければ良い童謡とは言えません。 昔の唱歌の多くは、大人の目線で子供の世界を見て子供には難しい言葉で教える教育を主眼としたもので、上からの押し付けの感が否めません。この意味で山本さんの50曲に及ぶ選曲は、一曲一曲を上記の基準に照らして吟味されており、山本さんの見識の高さに改めて敬服しました。 もう一点は、これも山本さんの持論である美しく正しい日本語という観点です。私も日本語は世界で最も美しい言葉であると思っていますが、その根源は音の響きです。これは同音異義語の多い日本語ではとりわけ重要で、響きが違えば何を言っているのか分からなかったり、ひどい時は別の意味にとられてしまいます。日常会話ではその場の雰囲気や、話の内容、前後の言葉の結びつきなどを勘案して判断しますので、さして不自然さを感じませんが、言葉の限られた詩の世界ではそうは行きません。日本語の詩は言葉自体が音とリズムを持っていますから、声を出して十回読めば自然にメロディーが湧いてきます。この美しい響きは耳から聴いて覚えるほかなく、そのためには歌が最適です。ところが、その美しい響きを伝える歌手は少なく、歌詞を発音記号であるカナが並んでいるだけと解釈して平然と歌っており、日本語をなんと心得ているのかと怒りを感じる場合が少なくありません。このような環境では子供たちが正しい日本語を知ることは不可能です。 この意味でも今回の山本さんのCDは完璧で、親や先生も子供たちと一緒に楽しみながら美しい日本語を覚えることが出来るでしょう。ぜひ一聴をお薦めします。お値段も50曲1時間以上で1000円と格安です。 写真 山本健二リサイタル ※山本氏は編集子と早稲田大学グリークラブ同期(1956年卒)で、彼が学生指揮者、私がセカンドテノールのパートリーダーという仲でした。筆者の大澤氏は1年下のベースでした。山本氏は、指揮者としても多くの実績を残していますが、定期的にリサイタルを開催し、さらに、言葉の情感に触れる歌唱をモットーに歌い上げたCD「山本健二歌唱アルバム」全22巻(314曲)は特筆すべきライフワークになりました。詳しくは下記のHPを開いてください。歌唱も聴くことができます。 山本健二HP http://bariken.com/index.shtml ※余談ですが、大ヒット曲「小指の思い出」をはじめ多くのヒット曲を量産し、ちあきなおみ、八代亜紀、田川寿美らを育成して“スター作りの名手”と言われた鈴木淳氏(元・日本作曲家協会理事長)は、山本氏、編集子と同期のバリトン・パートリーダー。5月18日に銀座で、グリークラブ時代に中核を担った同期6名と心豊かに食事会を行い、秋に京都で盛大な同期会をやることを決めました。出席は15名前後になる予定で、今年は楽譜を持参し、当日パート練習もしっかりやって(54年ぶり強化合宿!?)、妙なる(?)男声ハーモニーもエンジョイしようということになりました。【Latvia編集長】 鈴木淳HP(ブログが興味深い)
http://homepage2.nifty.com/jun-suzuki/
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