ラトヴィア共和国アイガス・カルヴィティス首相演説要旨(仮訳)
(2006.4.19.東京で開催のラトヴィア・日本ビジネスフォーラムにて)

 

皆さん

 

ご列席の著名な皆さんにお話しできますことと、ラトヴィア・日本両国間の実りある経済協力につながる設計図を示すことができますことは格別な喜びであります。

 

1542年、ポルトガルの開拓者アントニオ・ダ・モタが最初の欧州人として日本に上陸以来、欧州と日本は相互に相手の文化、哲学、技術に敬意を払ってきています。遠く離れていながら貿易は盛んに行われてきました。

 

最近のEUの拡大により日欧の貿易関係に新しい展開の道が開かれました。ラトヴィアはEUの資格十分なメンバーとして日本にとって重要な経済パートナーとなる用意があり、またそうなりたいと願っています。

 

ラトヴィア大使館の開設は、明日私が公式に開館しますが、日本と繁栄する関係を築こうとする強い決意のシンボルとなるものです。今回の訪日を重要に考え、大使館の狙いとする日本の経済面にも重きをおいております。どうか大使館をラトヴィアに関するビジネスの照会や関心への窓口としてご利用されるようお願い申し上げます。私どもの大使館員は皆様に十分にお役に立てるものと思います。

 

ラトヴィアの経済について簡単にご紹介いたします。私たちの経済は、EUならびに世界主要国の中で急速に成長しております。2005年のGDPは驚異的な10.2%の成長を遂げました。ラトヴィア通貨−ラツ−は、現在はユーロに連動していますが、2008年までにユーロを採用している欧州通貨同盟に完全に加盟しようと計画しています。ラトヴィアは立地に恵まれており、4.5億人の消費者のいる欧州市場や急速に成長しているロシアやCIS諸国(訳者注:旧ソ連からバルト3国を除いた12ヵ国)の市場にも近接しております。ラトヴィアは開放経済を誇り、輸出振興と特に知識集約産業への投資の魅力を高めようと力を入れています。手厚い政府誘導策と安定した経済環境の下で外国からの投資を奨励いたしております。EUとNATOのメンバーであることが安全保障を約束したものとなっています。最後に、ラトヴィアの最も価値ある資源は、良く教育され多国語に通じた労働力であります。

 

ラトヴィアはリスボン戦略(訳者注:EU諸国間の経済活性化への合意)の達成に向けて望ましく進んでおります。私どもは競争力のために、自由貿易条件、高価値の輸出産業促進、海外からの投資に対する開放姿勢、世界市場の需要をにらんだ教育戦略などの間でバランスを考えた政策を取っております。私どもはEUの組織的財源を相応に支出します。その中で、人的資本の育成と国内企業の競争力強化に最大の割合を振り向けます。そのために日本の成し遂げたことを参考とし皆様から学ぼうとしております。

 

私たちの中央計画経済から市場経済への移行の成功により、元々西側に深く根ざした起源を今日のビジネス文化に植え付けることができました。それにも拘らず、ラトヴィアの多くの人が日本のビジネスの仕方、考え方を賞賛しています。TQCやジャストインタイムなどはラトヴィアのビジネス界で広く取り入れられているコンセプトの代表例です。

 

私は、我々の企業経営手法に日本がいっそう影響を与えてくれることを心から願っております。私は、日産自動車工場において従業員のいかなる提案でも製造工程に0.6秒以上の時間節減をもたらすものは経営者が考慮すると聞き感動いたしました。このことはかの有名な日本人の勤勉さを正に物語るものと考えます。このように私たちは、カイゼンの思想や日本における企業の社会的責任について大いに学ぼうと願っております。

 

私は、ラトヴィアと日本間の経済協力が実るための実践的ビジョンを皆様と分かち合いたいと願っております。過去の協力と将来展望を慎重に研究し、私どもの協力の基本となる高い潜在力を有する幾つかの産業を選び出しました。本日、皆様にラトヴィアの金融サービスと木製品業界の代表による発表をお聞きいただきたいと存じます。広範な協力の機会は医薬品、食料加工、旅行など他にもあります。しかしながら、私は個人的に次の3つの経済協力に注目しております。つまり、1)自動車生産、2)電子工業、3)輸送と物流の3つであります。

 

1.自動車生産

 多くの大手自動車会社は製造工場を東欧に移しています。労働力は同じ質を持ちながら賃金は西欧州の何分の一かに過ぎません。ラトヴィアは自動車製造に長い伝統を持ち、その技能集団が再び復活してきています。二つの例を挙げますと、ラトヴィアはボルボやスカニアの大型トラックのスペアパーツのみでなく伝説的なポルシェ、フェラーリ、ベントレーの高性能冷却装置を製造しています。同様の協働関係をラトヴィアの製造者と日本の自動車会社の間で築き挙げることができます。私たちはトヨタ、三菱と接触を始めましたが、互恵的な協力が出来ることを楽しみにしております。

 

2.電子工業

 ソヴィエト時代、ラトヴィアは電子工業、コンピュータシステム、軍事システムなど知識集約高度技術産業の中心地でした。古いソヴィエト組織が崩壊したにも拘らずその能力とノウハウは独立したラトヴィア経済に溢れ広がりました。ラトヴィアの電子産業は大半が輸出指向であり、それは世界レベルの競争力があることを示しています。中国の労働力がずっと安いのは正しいですが、コストパーフォーマンス率においてはラトヴィアが上手をいきます。我々の専門家は電子工業生産に必要な高度な熟練をより備えています。

 

 さらに、生産や最終電子製品の組み立てをラトヴィアで行うことで、日本の製造会社は低い関税や他の輸入障壁の恩恵を受けるでしょう。最終製品の輸入には通常、部品や製造投入物よりも高い輸入税を課せられるものです。したがって、日本の製造業者にとりまして多くの有利な機会が存在しています。

 

3.移出入・輸送と物流

 最後にそして最も大事なものとして、輸送と物流の分野で協力できる広い潜在力があることを申し上げたい。ラトヴィアは、自然資源に恵まれず、競争力の源は主に二つの要素から成立っています。一つは人材、もう一つは地理的位置です。これら要素を生かすことで世界に伍した輸送産業を生み出し、GDP10%、雇用8%を占め、ラトヴィアのサービス産業による輸出収入の60%を稼ぎ出しています。

 

ソヴィエト連邦の欧州との玄関口として、ラトヴィアは卓抜した輸送インフラを受け継いで来ました。三大不凍港があり、発達した鉄道ネットワークはロシアの鉄道と完全に繋がっており大容量の貨物移送に適しています。伝統的に東西間の海上輸送には大きな隘路と安全に対する懸念があり、そのために欧州・アジア間の陸路輸送が急速に伸びています。それにより新しいシルクロードができつつあると言えます。トランスシベリア鉄道を利用し、ラトヴィアの港湾を経由して西欧に移出することで、日本の輸出業者は輸送期間をわずかなコスト増加で45日から15日に短縮し、3倍の効率を図ることが出来ます。同じように、ラトヴィアの港湾は日本が欧州で生産した製品のロシア/CIS向け大型輸送基地となることができます。さらに、多くの西欧の港湾とは異なり、ラトヴィアの港湾にはターミナル拡張の広い土地がまだあります。このように私たちは皆様がラトヴィアのシルクロードを利用されることを奨励したいと存じます。

 

ラトヴィア政府に代わりまして、皆様の暖かい歓待と興味を示してくださいましたことに心から感謝申し上げます。どうか皆様がこの素晴らしい機会を通して価値ある出会いと日本とラトヴィアの間で成功する協力への道を作ることを願っております。

 

アリガトウゴザイマス。そしてビジネスを成就させましょう!



 

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keisuke Suzuki(C) 2005