ブラボー連呼、大成功だった早稲田大学グリークラブ演奏会



 

 早稲田大学グリークラブのバルト演奏旅行は、東欧最古のビリニュス大学(1570年カレッジとしてスタート、1579年ローマ法王より大学として認可)の女声合唱団VIRGOの創立25周年記念祭典(10月13日?16日)に招待され、その途次にラトビアで2回の演奏会を開いたものです。当協会が後援しました。

 学生たちは10日深夜コペンハーゲン経由リーガに着き、11日午後1時よりリーガ文化学校(日本の小学1年から高校3年までの一貫教育を行う公立学校)で約1時間の交歓演奏会を開きました。演奏会の通訳はつい先日まで日本で活躍したオレグ・オルロフ君。演奏会の前半は、校歌「都の西北」、「斎太郎節」、「月光とピエロ(唐草模様)」、「UBOJ」…。一曲歌うごとに聴衆(子供たち)の盛り上がりと興奮が高まってくるのが感じられました。
ここで学校側から生徒による民族舞踊の紹介があり、一部のグリーメンは子供たちと一緒に踊りました。最初は音楽が鳴らず、子供たちの手拍子だけのリズムで踊る一幕もありました。子供たちの明るく素直な雰囲気にあふれ、とても爽やかな気分になりました。
 踊りのあとは子供たちの質問受け付け。“日本からどうやってリーガへ来たのか?”という可愛い質問から、“皆さんは学生のプロ合唱団か?”“コペンハーゲンでは何をしていたか?”“ラトビアの印象は?(緑が多い、建物が美しい、何をとっても絵になると応えると大拍手…)”。
その後、全員で「上を向いて歩こう」の合唱。グリーが「Ride the Chariot」などを歌い、学生指揮者の大和田君へ花束贈呈。ちょっとした花束から一輪の花まで、花のプレゼントの仕方にとても好感が持てました。会場のあまりも楽しそうな盛り上がりに、指揮者の山本健二氏が飛び入りで「さくら」「浜辺の歌」を披露。先生方や子供たちも水を打ったように山本さんの日本のメロディに聞き入りました。歌い終わるとヤンヤの拍手、上級生たちの口笛…。予想してなかった山本さんの出現に、子供たちも山本さんに上げる花がありません。それでも1本、2本とどこからともなく出てきました。小さな女の子が自分の頭に飾っていた花輪から1本抜いて手渡した場面はとても印象的でした。ラトビア人は本当に花を愛する民族だとあらためて感じました。

 今回の演奏旅行を決めた時、学生から指揮者について相談を受けました。私は予てから、日本の合唱団が美しい日本のメロディをもっと海外に紹介すべきだと思っていましたので、日本の歌でプログラムングしたらどうだろう。日本の歌ならその情感を伝えるには山本健二さんがベストだと話しました。運よく演奏旅行の期間中だけ彼のスケジュールが空いていました。
 学生には何でも手伝うけれど、決めて実行するのは君たち自身だと常々話していました。しかし、現実はそんなカッコのよいものではありません。ようやくお互いの意志が通い合うようになったのは8月の半ばになってからでしょうか。
グリークラブは4年間在学中だけが現役メンバーで、次々に入れ替わる宿命を背負っています。今年の現役は六大学の演奏会を聴いた時から、これで合唱王国に出かけられるのかといささか心配でした。指揮者のパーフォマンスばかりが目立ちました。
9月末、外国人記者クラブのステージでも、顔が引きつって歌になってないのです。さすがに翌朝、学生部長に、“今まで何をやってきたんだ!”と言ってしまいました。
出発まであと10日。すぐに山本さんに、“とにかく形がつくようにしてください”と懇請しました。ご自身のステージを控えていましたが、“やれるだけのことはやってみる”と出発直前の8日にも臨時練習を組み込みました。
山本さんは、学生たちの全身全霊を彼の棒に向けさせました。11日、文化学校で会った時、“何とかなるよ…”。演奏は暖かい声援もあって東京で聴いたよりぐっと良くなっていました。夜の本番も、第1ステージを急遽山本さんのソロ入りの日本の歌に変え(当初予定では第2ステージ)、いきなり聴衆をアッと言わせグリーのペースに引き込んでしまいました。
 今回の旅行で一番良かった演奏はリガのラトビア人協会ホールでの本番で、超満員の聴衆がブラボーを連呼してくれました。リトアニアのビリニュス公演はホールの残響が大きく、学生は戸惑っていましたが、ここでも山本さんは冷静に残響を聞きながら上手く指揮をされていました。
 指導力、歌の上手さ、タイミングよく客を引き込む機敏さで、50年前にグリーグラブを卒業した大先輩が現役を救ってくれました。

 リガ演奏会の翌日、学生たちはグループに分かれてラトビア大学学生の案内でリガ市を観光、午後からはバルト最大のレンスラン、リドで交歓会を開きました。その後一行は見送りを受けてバスでリトアニアのビリニュスへ移動しました。


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keisuke Suzuki(C) 2005