【5月10日】 松原千振会長就任メッセージ |
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2021/05/10 月曜日 15:28:37 JST | |
会長就任に当って =両国の音楽、一節のメロディーに思いを寄せる時を大切に=
日本ラトビア音楽協会会長 松原 千振
歌がいつも聞こえてくる。夏祭りのヨハネ祭の夜に、浜辺で燃える炎を飛びこえる儀式がいつも目の前にうかんでくる。吸いこむ息には波打ちぎわに生えている葦の匂いがあふれていた。女たちも男たちも花輪と木の葉でつくった飾輪をおっていて、それで互いに足をたたきあう。この儀式が恋を成就にみちびくといわれていた。 (ギドン・クレーメル「小さなバイオリン」より) ラトヴィアは小さな国である。でもラトヴィアは大きな歌の国である。それは1873年に行われた第1回「歌の祭典」に示され、1900年代に至って5年毎に開催される歌の祭典は序々に国民的な行事となり、世界無形文化遺産の認定をされるに至った。 しかしラトヴィアの音楽への関心はそれ以前に遡ぼる。最初のオーケストラの誕生は1761年、オペラの設立は1782年だった。積極的な活動は中部ヨーロッパに及び、作曲者の存命中に、モーツアルト「後宮よりの迷走」、ベートーベン「フィデリオ」「ミサソレニムス」等が演奏された。リーガの町を訪問又は活動した音楽家は、J・S・バッハの一番弟子だったミューテル、R・ワグナー、B・ワルター、そしてR・シューマン、H・ベルリオーズ等数えきれない。 ラトヴィアの音楽学者は自国の民謡を採集、研究し、民族資料館に収められたメロディーは2万9千、民族詞は120万を数えるという。 こうした史実はこの国の人々が歌と共に、音楽と共に生きてきたことを思わせ、例えクレーメルが世界的に著名なバイオリストであっても、心の中にはいつもラトヴィアの歌が流れている。 日本ラトビア音楽協会は、両国の音楽、そして歌に親しむ人々の集いとして、細やかな心を交い合わせ、一節のメロディーに思いを寄せる時を大切にしてゆく活動を実行したいと希っています。
松原千振氏プロフィール 1951年長野県生まれ。国立音大卒業後渡欧。シベリウス音楽院マスタークラス終了。1978年からフィンランドを中心にバルト諸国・北欧で活動を始め、ヘルシンキ大男声合唱団、フィンランド室内合唱団、タビオラ合唱団指揮者の他、バルト三国の各プロ合唱団の指揮を務め、多くの初演曲を演奏した。 現在はプロ合唱団の東京混声合唱団正指揮者、神戸市混声合唱団音楽監督を務め、多くのアマチュア合唱団を精力的に指導するなど北欧音楽の第一人者として知られる。 著書に「ジャン・シベリウスの交響楽でたどる生涯」(アルテスパブリッシング・税込み2420円)がある(2013年刊行)。 日本ラトビア音楽協会設立時から常務理事として活動に加わり、東京で定期的に開催した日本ラトビア音楽祭などの企画推進に尽力した。2021年会長に就任。 同協会合唱団ガイスマの初代指揮者・山脇卓也氏、現指揮者・佐藤拓氏が、早稲田大学グリークラブ学生指揮者を務めた1997年と2002年の定期演奏会で直接指導を受けたのは奇しき因縁、同クラブが2002年に行ったフィンランド・バルト三国演奏旅行に指揮者として同行した。
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最終更新日 ( 2021/05/12 水曜日 17:24:45 JST ) |