【11月15日】弁論コンクールの詳細と講評 堀口大樹
作者 webmaster   
2016/11/15 火曜日 17:30:14 JST


 

更に全国のラトビア語学習者の参加を期待したい。

 

             堀口 大樹(岩手大学准教授)

 

 

 

 

 

 

※写真は入賞者と講演する堀口氏

 

 

 20161112日、第4回日本ラビア語弁論コンクールが開催された。主催は駐日ラトビア大使館と日本ラトビア音楽協会、後援はラトビア文部科学省と大阪ラトビア総領事館であった。

 今回のコンクールの参加者は5名(第1カテゴリーでは2名、第2カテゴリーでは3名)と、残念ながらこれまでで最も少ない人数であった。それでも各参加者の個性が光り、これまでと遜色なく、依然レベルが高いものであった。

 

 審査員はDace Penke駐日ラトビア大使夫人、黒沢歩さん、Jānis Krūmiņšさん、Dana Antipovaさん、堀口大樹の5名により構成された。各スピーチの内容、発音、表現力が審査対象となり、第2カテゴリーではラトビア語による質疑応答も加わる。

 

 第1カテゴリーにまず登場したのは、北川青さんで、タイトルは「私のラトビア2016Mana Latvija 2016)」。小学2年生にして、ラトビアの訪問歴は今年で5回目。大人気ロックバンドPrāta Vētraの曲「Debesis iekrita Tevī(空が君に落ちてきた)」のサビのフレーズを混ぜて、今年の夏に行ったラトビアでの思い出を愛らしく語った。単なる愛らしさだけでなく、努力の結果、発音をまねる能力や独特の記憶力など、大人が年齢とともに失ってしまう能力を遺憾なく出し、「大使賞」を獲得した。日本人最年少のラトビア語学習者として今後も成長していってもらいたい。

 続いて登場したのは、社会人の中川雅貴さんで、タイトルは「私の曲(Mana Dziesma)」。偶然にも、直前に登場した北川青さんと同様、Prāta Vētraの人気曲を持参のギターで弾き語ってくれた。中川さんは徳島大学在学中にラトビア大学へ交換留学生として派遣され、日本に帰国後もラトビア語の独習を続けている。交通機関の影響で会場入りが遅れたことを自然なラトビア語で詫び、語学力を感じさせた。ギターや歌などの音楽的要素はもちろん、ラトビア語の発音も上手であった。楽器を使用した弾き語りは本コンクールでは初で、今後の参加者のモデルの一つになるだろう。初出場の本コンクールでは、「奨励賞」を獲得した。

 

 第2カテゴリーでは3名の出場があり、全員が大使館で行われている「ラトビア語教室」の受講生であった。

最初に登場したのは中城吉郎さんで、タイトルは「ラトビアの歴史を学ぶ勇士ラーチプレーシス(Mācos Latvijas vēsturi – Drosmīgs vīrs Lāčplēsis)」。これはラトビアの国民的叙事詩で、同名の主人公は「熊を裂くもの」という意味の同名の主人公は伝説上の人物であるが、国民的英雄として1111日が記念日にもなっている。ラトビアの歴史に興味がある中城さんは今年立ち上がった「ラトビア文化と歴史研究会」に所属。本作品を選び、作品の魅力を語った。硬派なテーマと難しい内容を選んだ挑戦心は、審査員から高い評価を得た。第3位を獲得。

 続いての登場は本コンクール初代チャンピオンの中井遼さんで、タイトルは「リーガと北九州の類似性?(Līdzība starp Rīgu un Kitakjūšū?)」。10月から北九州市立大学に准教授として着任し、多忙であったにも関わらず4回目の参加を決意。住んで間もない北九州市の街の構造や景観、工業都市として発展を遂げた過去、環境都市としての現在などのリーガとの類似点を挙げ、最後にどのように二都市が変わっていくのかという未来について問いかけた。無理がなく安定感のあるラトビア語力は、スピーチでも質疑応答でも健在であった。第2位を獲得。

 最後に登場したのは北川文さんで、タイトルは「手仕事の旅(Roku darbu ceļojums)」。近年日本では、ラトビアの伝統的な工芸品への関心が高まっている。北川さんはバルト3国の手仕事を巡る旅を今年から企画しており、そこで出会ったラトビアの自然や人々、文化の魅力について心を込めて語った。ここ数年は毎年娘の青さんと夏休みをラトビアで過ごし、ラトビア語でのコミュニケーションの経験値を上げていることは、質疑応答のやりとりでも感じられた。スピーチの淀みのなさや発音の明瞭さなど全体としての完成度の高さが評価され、見事第一位を獲得。

 

 参加者の表彰の後には、黒沢歩さんの「ラーチプレーシス」、堀口の「2014―2016年ラトビア語研究活動報告」といったミニレクチャーも行われ、ラトビアの文学やラトビア語について学んだ。コンクール終了後の懇親会では、参加者、観覧者、審査員が親睦を深めた。

 今回3年ぶりの開催となったコンクールは、メジャー言語とは言えないラトビア語の学習者にとって、日々の学習の成果を披露し、学習者同士が交流をする貴重な場である。それを披露する場があるということは、非常にありがたいことである。この場を借りて、駐日ラトビア大使館に感謝したい。また来年度はさらに広報を充実させ、全国のラトビア語学習者の参加に期待したい。

 

【編集室からの情報】

 

堀口大樹氏はこの日、ノルマンス・ペンケ駐日大使から感謝状を贈られました。理由は「日本とラトビアの関係強化とラトビア語の普及に貢献」です。

 

 

 

 

 

 

最終更新日 ( 2016/11/16 水曜日 15:22:59 JST )