【4月17日】充実した第4回大使館カルチャーサロン
作者 webmaster   
2014/04/18 金曜日 20:46:48 JST

日本ラトビア音楽協会と在日ラトビア大使館が共催する第4回大使館カルチャーサロンが417日、ラトビア大使館で行われ、準備した席が満席になる盛会だった。この日は、前半が、「ダンスシューズで雪のシベリア」の翻訳出版で注目を集める黒沢歩さんの極めて興味深い内容の講演、後半は第一線で活躍を続けるソプラノ歌手・宮部小巻さんの熱唱(ピアノ前川夏さん)と、贅沢極まりない内容で参集された方々も大満足し最高の夜を過した。【Latvija編集長 徳田浩】

 

 

 

  

   

   冒頭、ペンケ大使がユーモラスに笑顔で挨拶。「今夜もこんな形で日本とラトビアの文化交流が出来ることは本当に嬉しい。ラトビアの音楽家たちは、メトロポリタンオペラで24時間にラボエームとマダムバタフライを主演したソプラノル歌手のオポラなど、世界中で大活躍している。日本にもオペラのクリンシュ、指揮のポーガ、バイオリンのクレーメルらが相次いで来日し両国の音楽交流を果たしてしる。今年はリガで合唱オリンピッツクが開催され日本の合唱団も参加してくれる…」などラトビアの音楽情報を詳しく紹介し、「ウクライナでは世界中の人々が影響を受ける悲しむべき状況が続いているが、今夜は大いに文化を楽しんでください」と結んだ。

 依頼を受けて10年、翻訳作業中のあんなこと、こんなこと… 

  黒沢歩さんは、この本に素晴らしい解説を寄せてくれた藤井会長(元ラトビア大使・後日、別ページに掲載)と、出版を引き受け数々の助言を与えてくれた新評論の武市社長に深い謝意を表し、翻訳にまつわる興味深いエピソードを次々に披露した。このページではポイントだけを紹介します(全内容は後日、別ページに掲載)

   

○…翻訳を依頼されたのは著者が外務大臣から欧州委員を務められた2004年。著者のカルニエテさんは、他にも多くの著者があり、政党をひっぱる政治家としての堂々としたたくましい面と、衣類や料理、など日常の美を大切にする細やかな女性らいし面とを併せ持つ素晴らしい人。本の打ち合わせにご自宅に伺ったが、本に囲まれた居心地のよい部屋の印象が強く残っている。

 ○…原作は大変読みやすく分かりやすいが、このまま日本語に置き換えてみてもスラスラ読めないことが分かった。家族関係を指す言葉や表記が複雑で、試作品の最初の読者である母に、人物表記がこんがらがってとても読めないと投げ出されてしまった。それから10年、断続的に翻訳を続けた。長い時間をかけて翻訳したわりに、丸二日で読んでしまった(編集子のこと!)、という嬉しいようなあっけないようなお声を聞いいたが、確かに複数のラトビアの人名とその関係性が頭に入っているうちに読んでしまった方が、読みやすいかも知れない。 

○…本文に難解な註が多く、歴史的な記述の部分ではまず史実を自分で把握し、それをいかにわかりやすく約して伝えるかに苦心した。日記や手紙の部分を訳しているときはスラスラと言葉がつながった。この仕事のおかげで、これまで読もうと思ったこともない書物を何冊も読むことができたし、昔読んだ小説や詩が当時は想像もつかない新しい視点で読み直すことができた。

 ○…この本の半分は自伝であるのに、その半分は家族に残された手紙や書類などの記録と、同じような体験を経た人々への取材、さらには歴史書などを参考に書かれている。これらの手紙の書き手が主に女性であったことから、複雑で、すさましい歴史を、主として女性の側から、会話体で書きなおした作品と言えるかも知れない。温かい友情や節度ある思いやりが、離れ離れになった家族を結び付けている部分など読んでいてほっとさせられた。

 ○…バルト三国には、シベリア追放の憂き目にあった家族や親類、友人、知人がいない人はいないさえ言われている。ところがラトビア人でさえも、この分野は思い出したくない、触れたくない歴史として、あえて読むことを拒む人も少なくない。本書は11ヶ国語に翻訳されているが、この本を訳するに当たって、一つの疑問があった。日本では知名度が極端に低い一作家の生涯というものが日本人に受けてとめてもらえるか、という点だった。

 ○…著者からいろいろなことを教わった。メールのやりとりは、いつも敏速でスムーズで大変に助かった。最後に彼女に聞いてみたいことは、“ダンスシューズは何色だったのか”、ということ。原書にない参考写真をラトビアの何人かの写真家の友人の助けを借り、とりわけ貴重な写真も掲載出来た。当時14歳だった少年が今はなくなっているが、写真を撮ったことが見つかれば大変なことであったと、提供してくれた写真史の研究家が教えてくれた。

 

 絶唱! 山田耕筰、R.シュトラウス、ラトビアの歌 

 

 

 

 

 

   

 サロンではめったに聴く機会のない、第一線で活躍中のソプラノ歌手・宮部小巻さん。白と黒を基調にした素敵なドレス姿であでやかに登場した。山田耕筰の日本歌曲、R.シュトラウスの歌曲を格調高く熱唱し、最後は我々も知っているラトビアの歌を見事なラトビア語で歌い上げ、客席を完全に魅了した(ピアノ:前川夏さん)。宮部さんが講師を務める聖徳学園で声楽を学ぶ高校生3人が感嘆の表情で聴き入っていた。加藤登紀子や百万本のバラを知らない超若い世代が、はるばる千葉からこのサロンに来てくれたことで、何かほのぼのとした気持になった。最後は宮部さんのリードで、全員による合唱「風よそよげ」。編集子も大声で歌った。

【演奏曲】

1、山田耕筰作品 野薔薇、樹立、この道、薔薇の花に心をこめて

2、R.シュトラウス作品 私は愛を抱いて、セレナーデ

3 ラトビアの歌 祈り、我が祖国、三つの星

 ※黒沢さん、宮部さんのプロフィールは 【3月19日】黒沢さんが講演 第4回カルチャーサロンのご案内

最終更新日 ( 2014/04/18 金曜日 21:07:06 JST )