【12月19日】第3回日本ラトビア語弁論コンクール詳報
作者 webmaster   
2013/12/19 木曜日 14:41:33 JST

第二カテゴリー優勝・伊東えりかさん(合唱団「ガイスマ」幹事長)

 

第一カテゴリー優勝・北川青さん(5歳)

                           

                            ラトビア語教室講師 堀口大樹

  

  3回日本ラトビア弁論コンクール参加者記念撮影(1130日・大使館)

  1130日、駐日ラトビア大使館・日本ラトビア音楽協会の共催、ラトビア文部科学省の後援により、第3回日本ラトビア語弁論コンクールが行われた。13名が参加した昨年より少ない、9名の参加となったが、どの方も日頃の学習の成果を3分から4分のスピーチに込めた。

 ノルマンス・ペンケ駐日ラトビア大使は、着任して初となる本大会で「ラトビア語学習者のみなさんは、ラトビアの名を日本で広めてくれる点でラトビア大使館の職員同然です」と開会の挨拶を述べた。

 審査員には、ダッツェ・ペンケ大使夫人、ダナ・ルダーカ二等書記官、北海道東川町国際交流員のウナ・ヴォルコワさん、在東京ラトビア人を代表してヤーニス・クルーミンシュさん、筆者、そして大会の最後に各参加者にコメントをする審査員長はラトビア語翻訳家の黒沢歩さんが務めた。

  昨年から設けられた第一カテゴリーでは、ラトビア語によるスピーチ、歌、詩の朗読の披露など、ラトビア語であれば何をしてもよいという、非常に多様な部門である。抽選により先陣を切ったのは、北海道東川町の小学校4年生の佐藤小春さん。初の小学生、初の北海道からの参加は、記念すべきことである。今年の夏に東川町に来ていた姉妹都市ルーイエナの高校生との交流で、ラトビアに興味を持った佐藤さんは、ラトビアへの憧れを日本語で詩にし、それを東川町役場の国際交流員ウナ・ヴォルコワさんがラトビア語に訳した。ラトビアをイメージした美しいコラージュを見せて、「ラトビアの風」と題した詩をラトビア語で朗読してくれた。続いての発表は北川青さん。昨年はお母様と一緒の発表であったが、今年は自らの意思で一人舞台を踏むことを決めた。5歳にしてすでに二回目となった今年夏の訪ラトを語った。スピーチはもちろんのこと、ラトビアの友人に買ってもらった人形を生かした芝居、歌を盛り込んだ多彩な内容であった。スピーチを締めくくった「大きくなったら、ラトビア大学で勉強、ラトビアの銀行に就職、ラトビア人と結婚して、ラトビア人の子供を産みます。男の子ならカールリス、女の子ならダイナと名付けます」という5歳の日本人の女の子のことばを多くのラトビア人に聞いてほしいと感じたのは、私だけではないはずである。3番目の出場は、北川青さんのお母さん、北川文さん。「子供に優しい国、ラトビア」という題で、子供のおもちゃやレストランなどでの子連れ客への配慮といったラトビア人の美意識を、お母さんという独自の視点で語った。続いての出場は、4月より「ラトビア語教室」に通われている中城吉郎さん。様々なラトビアの「切手」の解説をしてくれ、ご自身のお仕事に直結した内容のスピーチは非常に見応えがあり、飽きない工夫が随所になされていた。当協会でも活躍されている頴原信二郎さんは、今年7月の歌の祭典の際に現地での歓迎ぶりに感動。その感謝を2020年の東京五輪でラトビアの選手を日本流の“おもてなし”で迎えることが恩返しになる、そのためには、ラトビア語の勉強と歌の練習が必要、と主張。第一カテゴリーのトリを飾ったのは、ラトビア語教室事務局の植木佐代さん。今年参加した歌の祭典の写真を見せながら、野外ステージで歌った忘れられない思い出を語ってくれた。 第一カテゴリーでは、出場者6人のうち最もリラックスして臨んでいた北川青さんが安定した評価を得て見事優勝。2位をつかんだのは、同点の上、審査員6名による多数決の投票でも同点となった北川文さんと中城吉郎さんであった。また特別賞には佐藤小春さんが選ばれ、その挑戦と健闘をたたえた。

  スピーチに加えて質疑応答がある第二カテゴリーでトップを切ったのは、93年にラトビア留学をしていた貴重な経験を持つ清水とよみさん。港町として栄えたこと、水のある風景が似ていることから、生まれ育った横浜とリーガの共通点を見つけ、二つの町を結ぶ船になりたいと主張。中世の街並みが残るリーガで、昔の横浜に思いをはせる独特の感性を語ってくれた。中井遼さんは、ユーロ導入、OECD加盟交渉の開始、ソ連からの独立回復後の独立期間が最初の独立期間より長くなったことを「ラトビアの変化の年に思うこと」としてまとめ、ご自身の専門である政治・社会をテーマに選んだ。唯一第1回大会からの連続出場を果たしている中井さんは、テーマと表現の点でハイリスク・高難度のスピーチを用意し、新しい挑戦をしてくれた。これを機にさらにラトビア語に磨きをかけ、将来ラトビア語でラトビアの研究者と議論を交わしていただきたい。今回初出場となったのは、筑波大学大学院でラトビアの歌の祭典を研究し、合唱団ガイスマの幹事長でもある伊東えりかさん。「私がラトビア語を学ぶ理由」と題し、ラトビア大学留学中のエピソードを語ってくれた。英語が世界の共通語となっている今、ラトビア語を勉強する私たちの誰もが、ラトビア人の好意的な態度を感じてきたはずである。その点で、このスピーチは会場にいた多くの人の共感を得た。第二カテゴリーでは、圧倒的な発音の良さと、質疑応答の際に垣間見えた潜在的なコミュニケーション力の高さで、伊東えりかさんが優勝。

  運営の都合上、大会の当日は残念ながら不確定であった、優勝者に贈られる往復航空券は、後日彼女のもとに届くはずである。 昨年よりも2週間ほど開催が早いことから、全体として原稿の暗記度のレベルが下がった感は否めない。原稿の暗記は明文化されていないものの、審査員も聴衆も出場者に原稿の暗記を期待している空気があるのは、出場者自身が感じたはずである。参加者の指導をした者としても、この点は来年への反省材料としたい。ただ全体としては、参加者のレベルはやはり高い。もはや「暗記したスピーチの発表」という枠を超え、テーマの面白さ、新しさという内容面、イントネーションや間、スピードの緩急といった言語表現面、さらには姿勢、視線、顔の動きといった所作や小道具の効果的な使用といった「演劇的要素」が高まり、スピーチの内容はより高度になっている。ラトビア語学習者は大切な仲間であり、大会の和やかな雰囲気はいつも変わらない。来年はより多くの方の参加に期待したい。  

最終更新日 ( 2013/12/19 木曜日 14:45:41 JST )