【8月8日】ブラボー、「大江戸コラリアーず」定期演奏会
作者 webmaster   
2010/08/09 月曜日 17:43:07 JST

 お馴染みの山脇卓也氏が指揮する男声合唱団「大江戸コラリアーず」(通称:おえコラ)の第9回定期演奏会が88日、杉並公会堂大ホールで行われ、人気と実力を象徴するように超満員の聴衆が会場を埋め、最後まで絶賛の拍手を贈り続けた。最終ステージの「御誦(おらしょ)」が終った瞬間、私の目から感動の涙がこぼれた。今年テーマは「祈り」。80名のメンバーが、ブルックナーの「アベマリア」に始まる多彩でハードなプログラムを見事に歌いきった。アマチュアによる究極の男声合唱と評価すべき演奏会だった。 

 メンバー構成は10代の学生数人の他、殆んど2030代の歌い盛り。学生時代は無我夢中に歌い続けて、声量・声の円熟味、合唱の心などなどが、“さあこれから!”という時に学窓を去る。学生時代に男声合唱で青春を燃焼させた彼等の受け皿としてこんな合唱団が存在することは、日本の合唱界にとっても限りない価値がある。「お江戸コラリアーず」は今年10年目の節目を迎えたが、昨年の全日本合唱コンクールで金賞を獲得、今年も出場する。ますますの活躍と躍進を祈りたい。

男声合唱を60年近く続けてきた私の、もう絶対に果せない夢を、若い人たちが私に代わって叶えてくれた気がした。羨ましい気持ちもあったが、“ありがとう!”という言葉が思わず出た。【Latvija編集長 徳田浩】

  

[第1ステージ]

ブルックナー「アベマリア」、プークラン「パドヴァの聖アントニオ賛歌」、コチャール「神よほめたまえ」とも中身の濃いオリジナル男声合唱曲。最後の曲を振った村田雅之氏も才能豊かな団内指揮者。

 

[2ステージ]

男声合唱とピアノのための「くちびるに歌を」。2005年に信長貴富氏が、ドイツ語の言語と日本語訳の両方をテキストにして作曲した意欲的な組曲。全体にメロディーラインが美しく、男声合唱の素晴らしさを堪能させる。とりわけ終曲は圧倒的魅力に満ちた佳品で、迫力と美しいハーモニーに引きずり込まれた。須長真美さん(ピアノ)の柔らかいタッチが、この作品と見事に調和していた。

 

[3ステージ]

 全員赤いシャツに着替えて登場。台湾、エストニア、ラトビア、インド、ナイジェリアのユニークな作品をバラエティー豊かに構成したステージで、いきなり16ビートのアベマリアが演奏して度肝を抜いた。かつて地元の合唱団で聴いた「雷神への連祷(トルミス)」は、日本の合唱団では無理だろうと思っていた作品だが、二人のソリストともども見事な熱演だった。ラトビア民謡「私は戦争に向かった」の美しいメロディーとハーモニーを聴けたのも嬉しかった。男声合唱のメニーサイド・醍醐味を満喫させたステージだった。このステージも第一曲を村田氏が振った。

 

[4ステージ]

 「御」を久し振りに聴かせてもらった。大島ミチル氏が音楽学校在学中に作曲した男声合唱とアルトとピアノとパーカッションのための名曲(組曲)で、私自身は03年の早稲田グリー定演(山田和樹指揮)で聴いて感嘆した作品。今回の祈りをテーマにしたプログラムの最後を飾るに相応しい選曲で、緊張感あふれた合唱に加えて、照明、メンバーの黒衣装・パファーマンスが雰囲気を最高に盛り上げ、感動的な名演の舞台になった。全てが協調してアベマリアを歌い上げる最後の場面の、メンバー全員の充実した表情がこの日の成功の全てを物語っていた。文字通り、メンバー全員が主役だった。社会人の限られた練習時間の中でよくここまで仕上げた努力を絶賛したい。アルトの池田眞子氏、ピアノの前田勝則氏、パーカッションの目等貴士・久米彩音両氏の、メンバーの情熱と一体になった熱演も光った。

  
最終更新日 ( 2010/08/09 月曜日 17:43:52 JST )