【12/10】リガ大聖堂少年合唱団 東京カテドラル聖マリア大聖堂演奏会 |
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2008/12/13 土曜日 13:16:20 JST | |
唖然とする美しい響き、高い芸術性。これぞ世界に冠たる合唱王国ラトビアの真髄! 待望久しいリガ大聖堂少年合唱団の東京演奏会を聴いた。それも、彼等に最も相応しい「東京カテドラル聖マリア大聖堂」で。文字通り天に届く天使のようなボーイソプラノの美しい声が、この会場でしか味わえない素晴らしい残響と共に会場を包み込み、何とも至福の2時間余だった。一夜明けてもまだ、少年たちのあどけない表情と共に、コンサートの感動と興奮が醒めない…。超満員だった聴衆の一人ひとりが同じ気持を味わっているに違いない。 リガ大聖堂といえば巨大なパイプオルガンがあまりにも有名で、私もその荘厳な響きを直接耳にしたことがある。今回はその大聖堂の正オルガニストであるアイワールス・カレイスが一緒に来日し、カテドラルが誇る美しい音色のパイプオルガンを演奏した。少年合唱団とオルガンが一体になった音楽は、正に世界に冠たるオルガンと合唱の国・ラトビアの真髄を極めたもので、あたかもリガ大聖堂の中にいる錯覚を味わった。 今回の来日メンバーは青年部13名と少年部25名の計38名。まず開幕にア・カペラで演奏されたラトビア人作曲家、ウギス・プラウリンシュの「ミサ・リジェンヌ」の美しさと高い芸術性に度肝を抜かれた。半世紀以上も合唱を続けている私の最初の印象は“合唱が違う!”。これがラトビア合唱の伝統なのか。青年部の豊かな声と歌唱力でハーモニーを分厚くして芸術性を高めながら、あくまで舞台の主役は少年たち。この難曲を、前列にいるとりわけ小さい少年が無邪気な表情で歌っていることが信じられなかった。少年部だけで演奏したアベマリア二曲、とりわけ年少の14名が一段高い場所に移動して、高いピッチのユニゾンで歌ったグノーは美の極致だった。 青年部が加わったバッハ、ラフマニノフ、デュプレ、モーツアルトなどの作品でも舞台の主役はあくまで少年たち。それぞれの深い表現は到底少年の演奏とは思えなかった。モーツアルト「レクイエム」の美しいハーモニーに思わず涙ぐんでしまった。 後半には馬の足音などの擬音を入れながら得意のラトビア民謡を4曲演奏し、最後はバッハの「クリスマス・オラトリオ」に始まるクリスマス・ソングを歌うなど、この合唱団の持つ多彩なレパートリーと可能性を存分に楽しませた。アンコールで歌った日本語の「きよしこの夜」の美しさに体全体が痺れてしまった。 指揮のマルティンス・クリサンスの物静かで控え目な動きは、逆に底知れず奥の深さを感じた。文字通り合唱王国の卓越した指揮者であることを証明した。美しいテノールソロも披露した。 ラトビアではパイプオルガンと合唱が一体になった名曲が多いが、日本ではまだこの響きの素晴らしさや表現の豊かさにあまり注目されていない。各地に埃の被ったパイプオルガンも多いだけに、もっと多くの人が親しむべきだと痛感した。 今回のコンサートツアーは当日本ラトビア音楽協会が後援、客席ではラトビア語教室のメンバーや多くの会員が想像を絶した素晴らしさに酔い、合唱の国ラトビアの伝統と力を改めて実感した。大使館のグナさん、オレグスさんら、多くのラトビア人も客席にいたが、それぞれの表情に誇らしさが垣間見えた。(徳)
【写真はアルス東京提供】
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最終更新日 ( 2008/12/21 日曜日 23:34:30 JST ) |