以下は石井洋一常務理事がFacebookに投稿されたものです。協会関連の皆様にも読んで欲しい内容ですので転載します。写真はリハーサル風景。（広報担当・徳田浩）

編集子と石井洋一さん（ラトビア音楽祭楽屋で）

レクイエム・プロジェクト東京2015を振り返って

石井洋一

会場を抑えなければということになったのは昨年7月、東京いのりのとき合唱団の第1回定期演奏会が終わって、上田先生から来年は東京でもレクイエム・プロジェクトとして演奏会をやりたいと話があったからでした。まず申込できそうなところを探すと7月20日過ぎから申し込みを受け付ける「ティアラこうとう」が浮かびました。本当は800席程度のところが身の丈にあっていると考えていたのですが、抽選なので当たるかどうか運だめしのつもりで申し込んだのでした。その結果が判ったのは、レクイエム・プロジェクト佐用町2014に向かうバスの中でした。なんと当選!!　先生に報告するとすぐその場で発表されてしまったのでした。

これは後で知ったことですが、ティアラこうとうのある猿江恩賜公園は東京大空襲で犠牲になったかた13千人余りが仮埋葬されていたところでした。戦後70年のレクイエム・プロジェクトには最もふさわしい場所だったのです。山の手のホールよりも下町でやりたいと漠然と考えていたのですが、だんだんとコンサートのコンセプトが固まってきました。そうすると児童合唱も下町の子供に参加してほしと考え平田先生に相談したところ、すみだ少年少女から前向きに考えたいと返事を頂き、年明けには正式に決定していただきました。また深川高校の合唱部も参加の意向があると聞き、惨禍を忘れず次の世代に受け継いでもらう構想も固まりました。これら地元団体の参加を得て、江東区の後援が決まり、東京都の後援も固まり、いつもの練習場である千代田区からも後援を得て、大きな推進力になりました

個人的なことですが、私の父は大将12年5月に深川数矢町町で生まれました。いまの深川八幡の境内にあった三十三間堂で行われた通し矢の町名で、今はわずかに小学校の名前に残っているだけです。生後３ヶ月で関東大震災にあい、祖母は乳飲み子を背負って貯水場のある木場に逃げました。火災が起きたと聞いて水面が広いところなら安全と直感的に考えたようです。数矢町からほど近くには広大な空き地だった被服廟跡がありました。そこには大八車に荷物を結んだ大勢の人たちが避難していましたが、折からの強風で巻き上げられた火の子から飛び火して荷物が萌え出し、逃げ場を失った多くの方は亡くなりました。祖母が逃げる方向を間違えていたならば私が生まれることはなかったのです。

父はその後、徴兵からたたき上げの軍人になった祖父の考えで陸軍士官学校に進み、終戦時には下士官として霞ヶ浦の航空隊で少年航空兵の訓練を担当していました。結局外地へ出征することはなく終戦を迎えましたが、本土決戦のために温存されていたのかもしれません。人事のあやで戦場に派遣されていれば、あるいはもう少し戦争が長引いて本土決戦になれば真っ先に戦死していたに違いありませんから、そうなれば私も生まれることはなかったのです。

江東区深川は私がサラリーマン時代に配属されて勤務したところでもありました。こうした何重にもつながった円がある土地でレクイエム・プロジェクトが開催されたと考えると、その意味がより重く感じられています。

836人の入場者数というは結構重いことで、第１回の東京プロジェクトを行った浜離宮朝日ホールならば300人威嚇があふれる水準です。第一希望と考えていた渋谷の大和田さくらホールでも100人近くあふれますし、紀尾井ホールでも席が足りなくなります。よくぞここれだけの方が来て下さったと改めて感謝しています。何かに導かれるようにここまでやってきて本当によかったと思っています。あらためて、関わっていたたいた皆様に御礼申し上げます。