合唱の真髄を聴かせた第4回Japan Chamber Choir演奏会 今年はフィンランドの誇り、ジャン・シベリウス生誕150年のメモリアルイヤー。その記念コンサートの第1弾、「Japan Chamber Choir(以下JCC)」による「シベリウスとその時代」を聴いた(1月12日・浜離宮朝日ホール)。指揮はこの合唱団の主宰者で、北欧・バルト、とりわけフィンランドの音楽を知り尽くす当協会常務理事の松原千振さん。新春早々、めったに聴けない見事なハーモニーを響かせ、フィンランド合唱曲の魅力を披露した。 東混とは一味違うプロ集団JCC JCCはかつてのジャパン・ユース合唱団のメンバー達で、全国に散在するプロの声楽家、合唱指揮者、作曲家、音楽教師、学生、ハイアマチュアの合唱歌手などで構成された、いわばプロ集団。ジャパン・ユース時代よりさらに一人一人の声が練れている。特徴はコンサート直前の合宿で集中練習を行うスタイルで、今回はソプラノ13、アルト7、テノール11、バス16の計47名が集まった。我々アマチュアは、長い時間をかけた繰り返しの練習でその合唱団の音を作り上げてゆくという常識があり、3日間でどんなサウンドに仕上がるのだろうか、という一抹の不安は1曲目の作品を聴いて完全に霧散した。常に同一メンバーで数多くの演奏活動を続ける東混とは一味も二味も違う新鮮さを感じた。何とも調和のとれた見事なアンサンブルで、とりわけ大きな塊が一つの音になってずしりと響きわたるバスに痺れた。全曲アカペラで当然ながら完璧なピッチ、やはり一人一人の歌唱力がしっかりしてないと、こんなに魅力的な合唱は出来ないのだろうな!と、いささかため息も出た。
公演は年1回だけ、東京では当分聴けない! JCCの公演は年1回、それも1月の成人の日にチャリティコンサートを行うと決めている。これまで神戸、大分、山形で開催し、4回目の今年が東京での初披露だった。来年は鹿児島に決まっているから、次に東京でいつ聴けるか分からない。この日客席にいた人は本当にラッキーだった。 東京公演の実行委員長を務めたのは我がガイスマ指揮者の佐藤拓君で、テノールのソロも担当した(短かったが…)。こんな演奏会を聴かせてくれたことに感謝したい。 松原指揮者の分かりやすい解説 正直なところ筆者は、シベリウスや彼の周辺の作曲家の合唱曲はほとんど初めて耳にしたが、松原氏の明快で分かりやすい解説で、一曲一曲の作品の魅力を十分感じ取ることができた。とりわけ2曲の男声合唱もあった後半のプログラムが素晴らしかった。同じ詩(我が心の歌)による3人の作曲家の作品を続けて演奏されたことも興味深かった。3月にはフィンランディア男声合唱団が来日するなど、今年は日本でシベリウスの作品が演奏される機会が多くなる。「クレルボ」が生で聴けるのも嬉しい。【Latvija編集長 徳田浩】 (二部) ジャン・シベリウス 舟歌(男声合唱) ジャン・シベリウス 我が心の歌(男声合唱) アアッレ・メリカント 我が心の歌 エイノユハニ・ラウタヴァーラ 我が心の歌 ジャン・シベリウス 2つのカンテレタルの詩による小品 エイノユハニ・ラウタヴァーラ Missa a cappellaより「グローリア」「クレド」 当日のプログラム (一部) カール・ニルセン 二つのモテットより ジャン・シベリウス プロモーションカンタータより2曲 レーヴィ・マデトヤ 古い修道院 トイヴォ・クーラ 太陽の昇る時 (二部) ジャン・シベリウス 舟歌(男声合唱) ジャン・シベリウス 我が心の歌(男声合唱) アアッレ・メリカント 我が心の歌 エイノユハニ・ラウダヴァーラ 我が心の歌 ジャン・シベリウス 二つのカンテレタルの詩による小品 エイノユハニ・ラウタヴァーラ ミサ・カペラより「グローリア」「クレド」 石井洋一会員がフェースブックに投稿した感想を転載します。 「今日は浜離宮朝日ホールで「第4回 Japan Chamber Choir 東日本大震災復興支援チャリティーコンサート シベリウスとその時代」を聴いた。今年の演奏会の聴き始め。今年はシベリウスの生誕150年のメモリアルイヤーで、その皮切りとなる演奏会だ。 この合唱団はかつてジャパンユース合唱団で活動していたメンバーが、指揮者松原千振さんの下で自主的に活動を始めたものらしい。今回が4回目とのことだが前回は山形、来年は鹿児島での開催になるので、今回を逃すと東京ではしばらく聴くことができない。各地で合唱指導者やソリスト、作曲家、音楽教師などとして活躍している人ばかり47名が、直前に合宿して集中練習し、本番に臨むというシステム。しかし、そんな寄せ集めとはとても思えないまとまったハーモニーで、ほとんど聞いたことのないフィンランド語ばかりの曲を、魅力的に聴かせてくれた。 プログラムは、さすがシベリウスの専門家の松原さんならではの凝った組み立てで、まず同じ年の生まれのNielsenで始まり、トークを加えながら進行。続いてシベリウスの若い頃の作品を3曲、さらにシベリウスの弟子二人、MadetojaとKuulaの作品を続けて前半が終了。 後半はシベリウスの男声合唱曲「船旅」で幕を開け、「我が心の歌」、さらにその同じ詩の異曲、MerikantoとRautavaaraのものを並べる。再びシベリウスに戻って2曲聴いた後、若い頃にシベリウスの柩を担いだというRautavaaraのGloriaとCredoで幕を閉じた。曲間には松原さんの巧みな解説があり、演奏の短さを感じさせないところはさすがだ。 アンコールが一曲だけあり、最後にフィンランディアでもやるかと思ったがそのまま終わってしまったのはちょっと残念。しかし、今年の幕開けにふさわしい、ハイレベルの演奏会だった。間違いなくベストテンに残る印象を強く持った次第。
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