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【2月8日】森川はるかのラトビア報告1 PDF プリント メール
作者 webmaster   
2011/02/07 月曜日 15:59:57 JST

 修士課程論文取材のため、1ヶ月間、冬のラトビアに滞在した森川はるか会員(立教大学大学院)のレポートを2回に分けて掲載します(写真も筆者撮影)。とても興味深い内容で一読に値します。【Latvija編集室】  

ラトヴィアの年末 文化のぶつかり合いの中で

                    

今回4回目のラトヴィア訪問だったのですが、実は冬に訪れるのは初めてでした。2010年の夏は観測史上最高記録の猛暑となったのですが、反対に冬はヨーロッパを襲った寒波の影響で連日雪という大変な状態でした。3週間弱の滞在期間の中で太陽を見たのはたったの4回。終日道路の除雪を行わねばならず、首都のリーガでは農家を借り出さなくてはならないほどでした。ラトガレ(東ラトヴィア)ではエネルギー危機となり、年明けの授業開始日には「本当にこの日に授業再開で大丈夫だろうか」と首相が危ぶんだほどでした。道路の凍結がひどく、私も目の前で若いサラリーマンが転倒したのを見てしまったほどでした。更に雪のために漏水も各所で頻発し、私の宿泊していたホステルの台所もびしょぬれ状態で、「ここで食事しているとシャワーを浴びることができるね」と宿泊客のドイツ人が苦笑していました。

 

氷点下10度ほどの真っ白で雪に覆われた薄暗い街、「勉強のためといっても3週間弱もいて、毎日退屈しなかった?」とホステルのスタッフに聞かれました。「いやいや、とてもきれいで、私は気に入ったよ」と答えると「そう、とてもきれいよね」とうなずいてくれました。

日照時間が短く、8時くらいに明るくなり15時くらいには夕暮れにかかるこの季節。そんな北ヨーロッパの街は穏やかな美しいイルミネーションでいっぱいになります。日本のように強いイルミネーションではなく、柔らかな光を散りばめたこの光景は、夜景が大好きな私にとって毎日全く飽きることがありませんでした。因みにこのイルミネーションについて、毎年「今年のこのイルミネーションは十分だったか?」というネット上のアンケートが行われるそうです。

そんなリーガの年末の様子を、今回はお伝えしようと思います。

 

 

  

 雪積もる旧市街

 

 

 

1219日、民俗野外博物館では冬至祭の日としてのイベントがありました。蜂蜜蝋燭作り体験や動物型ジンジャークッキーにチョコレートでの絵かき体験、年末に伝統的に行われる鉛を使った鋳込み占い、冬市などが行われていました。色鮮やかなイルミネーションが民家を照らされた真っ白な森の中、焚火の周りで輪になって踊り遊び、歌い楽しむ人々。夏とは異なる色彩の、冬のラトヴィアの風景を見つけた日でした。

 

 

  

 ジンジャークッキーお絵かき(筆者作)

 

  

 野外博物館前

 

1221日、首都リーガの旧市街で伝統的な冬至祭である、「丸太曳き」(Bļuka vakars ブリュッカ・ヴァカルス)の行事が行われました。毎年伝統文化保持団体によって主催され、22日に行われることが多いですが、今年は21日の夕方に行われました。クリスマス市で賑わう旧市街の大聖堂広場で「丸太曳き」をしようと、雪の舞う夕方に多くの人々が集まりました。テレビ局の人も現れ、夕方の生放送のためにアナウンサー一人で丸太を引っ張って見せていました。「ほら、こうして丸太を曳きます!いよいよ丸太曳きの始まりです!・・・・・・でももちろん、一人ではないですよ」

長さ1メートルほどの丸太3本に縄をつけ、皆で街中歩いて曳く。こうして丸太を曳くことで街中の邪気をかき集め、最後にこの丸太を燃やしてその年の邪気払いをします。ちょうど日本でいうと護摩に似ているかもしれません。

丸太を縄で引っ張ることは誰でも自由に出来るので私も早速参加しました。寒い中ぞろぞろと大聖堂広場から出発し、そのまま市庁舎へ。「市庁舎は一番邪気が多いものね!」と人々は言って、なんと市庁舎の中にそのまま丸太を曳いて入りました!日頃からラトヴィアはなかなか皮肉たっぷりのユーモアが上手な国だと感じていますが、今回は私も苦笑してしまいました。

こうして街中丸太を曳いて(何度も人にぶつかって丸太を追うのに苦労しましたが)、再び大聖堂広場へ。伝統文化保持団体の人や市庁舎の議員、狼男のスピーチなど行われ、その3本の丸太を燃やしました。「このクリスマスを皆で祝おう」・・・そうして夏至祭に作ったオークの冠を燃やしたり、歌を歌ったりと焚火を皆で囲みました。

この狼男、もちろん男性が狼のかぶり物をした格好なのですが、本来は伝統的な冬の仮面行列の行事に由来していると考えられます。この「丸太曳き」自体はラトヴィアの各地で現在再興している行事の一部なのですが、本来はĶekatas(チェカタス)という、人々がそれぞれクマ・ヤギなどの動物や良い魔女、小男などに変装して丸太を曳き、冬を祝う仮面行列の行事として行われていました。現在はハローウィンなどと混同されていることが多いようでこの仮面行列の行事はあまり行われていないようです。実際に私も見たことがありませんでしたが、Siguldaでは冬至の時に行われていると聞いております。

こうして冬を祝って温かいバルザムを飲んだり、輪になって音楽に合わせて遊んだり。古くから年中行事等を通して、見知らぬ人同士でも一緒に楽しむことで互いの交流を大切にしてきたのだと感じました。

 

 

 

  

  丸太を燃やす

 

12月下旬に差し掛かると街のあちこちでクリスマスコンサートが盛んに行われるようになります。キリスト教音楽や西欧音楽(クラシック)がメインとなっており教会で行われるものが多く、これは首都以外でももちろん盛んです。2010年は初めてリーガ・クリスマスコンサートという企画で、オーケストラや歌手を招いての大きなコンサートが行われました。我々にとってなじみのある「英語」のクリスマスソングのプログラム構成で(最後の「きよしこの夜」のみ、ラトヴィア語での全員合唱でした)、今人気の音楽家による演奏にだけあって素晴らしいものでした。2日間に渡って行われたこのコンサートは大勢の人で賑わい、無料で全員にジンジャークッキーが配られるなど、クリスマスのムードに溢れた良い企画だったのではと感じました。コンサート休憩時間にワッフルなどを買って食べていると知らないおばさんが「召し上がれ(直訳すると、良い食事を、になります)!クリスマスおめでとう!」とにっこり私に話しかけてきました。そんな会話が温かく響く、素敵なクリスマスの夜でした。

他にもクリスマス礼拝が24日をメインとして行われます。実は私はクリスチャンなので大聖堂の礼拝に出席してみたのですが、ラトヴィア語と英語との礼拝で時間がそれぞれ分かれていました。昨今クリスチャンではなくてもこの日の礼拝だけ出席する人も多いそうで、普段は埋まることのない大聖堂の席がほぼ満席でした。「クリスマス」はやはりキリスト教文化の象徴となると、実はキリスト教徒がそれほど多くないラトヴィアでは面白い光景なのかもしれません。これは日本とある種同じものが見出せるのではないでしょうか。

 

  

 凍るダウガワ川とその上に立つ筆者

 

 

 

 

 リーガ・コンサート

 

そうしてクリスマスが終わると、スーパーのあちらこちらで動物の形をした小さな鉛の物が売られ始められます。人々が群がって買っていく光景に日本人の友人は首を傾げたものでしたが・・・・・・実は「鋳込み占い」のためのもの。では「鋳込み占い」とは? さて、このお話はまた後ほどにいたしましょう。

  
最終更新日 ( 2011/02/07 月曜日 16:03:44 JST )
 
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