総出演者数340余名の盛会 現役へ熱いエール 第6回東京六大学OB合唱連盟演奏会が7月3日、東京文化会館大ホールで行われ、総出演者数340余名の盛会だった。近年は現役部員数が激減しているだけに、各OB合唱団は人数・演奏曲目とも総力を結集して臨み、“現役よ頑張ってくれ、伝統の灯を絶対消してはならないぞ!”と熱いエールを送るような熱演を繰り広げた。とりわけ、今年の四連現役に22名で臨んだ慶應ワグネルのOB合唱団は、約90名がオンステして元気溢れるOBの姿を強くアピールした。 この演奏会は1999年にスタートし、以降隔年で開催を続けている。今年で幹事校が一巡したことになるが、開催の都度、ホール、会計、ステージ、印刷、フロント、幹事をそれぞれの合唱団が分担し合う、見事な一体感で開催してきた。これまで、昭和女子大人見記念講堂(第1回)、東京芸術劇場大ホール(2回・5回)、東京文化会館大ホール(3回・4回)で開催した。現役や若手OB諸君に、この素晴らしい伝統をしっかり守って欲しいと強く思った。【Latvija編集長 徳田浩】 1、明治大学グリークラブOB会合唱団駿河台倶楽部 「男声合唱のための組曲“ゆうべ、海をみた”」 作詞:落合恵子 作曲:荻久保和明 指揮:渡辺利雅 ピアノ:高杉里香 オンステ46名、全員暗譜で音楽性豊かな見事な演奏。柔らかい発声でよく統一され、若い有能な指揮者の下で充分な練習ぶりが伺えた。終曲のピアニッシモは秀逸だった。1983年、明大グリーの委嘱作品。メンバーは昭和38年卒が最年長で、平成卒が9名含まれ全体的に若々しい印象。いきなりブラボーと叫びたくなる好演奏だった。 2、慶應義塾ワグネル・ソサィエティーOB合唱団 「シベリウス男声合唱曲集“六つの男声合唱曲”」 指揮:大久保光哉 ステージいっぱいにグレーのジャケット姿が並び聴衆を驚かせた。数えたら、プログラム掲載数より多い88名がオンステした。過日の早慶交歓演奏会の時、顔見知りのワグネルOBが現役の少なさを嘆いていたが、“現役頼むぜ!”という先輩の心意気が強く感じられた。昭和26~28年卒も目につくなど古いメンバーが多く、オールドボーイ健在を誇示した。平成卒は9名。演奏は言葉がやや雑でアインザッツが揃わない面がありシベリウスらしい透明さが欠けたが、それより、古いOBたちの強い気持ちを高く評価したい。指揮者はワグネルから芸大に進みオペラ歌手としても活躍中。北欧での研鑽が長くシベリウスにとりわけ造詣が深いという。 3、立教大学グリークラブOB男声合唱団 「マドリガル~男声合唱、打楽器、ピアノのために~」 作曲:新実徳英 指揮:高坂徹 ピアノ:久邇之宜 パーカッション 大熊理津子、小山有紀 新実氏34歳の頃に作曲した難曲を、現役10数名が加わって熱演した。オンステ数は52名。現役は暗譜で臨んだが作品の持つ迫力を完全に出し切れず、聴く側は不完全燃焼に終ったか? OBの多くは最初から断念したかも知れない。正直なところ筆者も、リズム・ハーモニー・音(断片的な言葉)の難解さにとまどいながら終わってしまった。ただ指揮者の気迫には脱帽したし、秀逸な久邇氏のピアノに効果的にパーカッションが絡み、凄く斬新な音楽に挑戦していることは十分理解できた。 4、東京大学音楽部OB合唱団アカデミカコール 「四つの祈りの歌」 作編曲:藤原義久 指揮:三澤洋史 ピアノ:三木蓉子 他にフルート、オーボエ、クラリネット、ビオラ、コントラバス、パーカッション 古いメンバー中心に今回も69名がオンステ、調和のとれた響きが美しく、室内楽と一体になったサウンドが心地良く会場に響いた。とりわけ抑え気味のメロデーラインが秀逸だった。この作品は1985年にコールアカデミー現役の為に無伴奏男声合唱曲として作曲されたもので、今回室内楽の伴奏付きとして改編された。4ヶ国語で書かれた祈りの音楽で、熱気と気品に溢れる佳品。メンバー達は近年、現役の新人勧誘企画などに物心両面の支援を続けているという。 5、法政大学アリオンコールOB会・男声合唱団オールアリオン 「合唱のためのコンポジションⅢ」 作曲:間宮芳生 指揮:田中信昭 オンステメンバー41名がアリオンの原点とも言えるこの作品を、平台を使わずに舞台前方に2列に並んで自信に満ちた表情で演奏した。よく声が出て迫力十分、久し振りに、これが“アリオンサウンド”だと感心した。同じ“コンポⅢ”でも一味違う。メンバーの年代構成もよく、平成卒年代が5名。何よりも、50数年も継続して指導を続ける田中信昭氏に敬服した。長い伝統を有するアリオン、あとはこれらのOBも奮闘して現役の部員増をどう図るかだ。手元に1998年発行のアリオンコール70年史があるが、素晴らしい歴史を持つ合唱団だ。 6、早稲田大学グリークラブOB会・稲門グリークラブ 「男声合唱曲・海の構図」 作詩:小林純一 作曲:中田喜直 編曲:福永陽一郎 ピアノ:大室晃子 今年の稲門はオンステ46名。当然のように全員暗譜で演演した。メンバーの構成は中心が昭和40年代から60年代卒で、松尾氏円熟の指揮で円熟の好演というところか。早稲田グリーOBは常日頃、年代別、地域別などに分かれて演奏活動を行っているが、総力を結集すべきこういう演奏会で平成卒の若手がいないのはやはり物足りない。演奏はもちろん数だけではないが、慶應が90名なら早稲田は100名がオンステして力強いワセグリ・サウンドを聴かせて欲しいと素朴に思った。今も現役は常に100名を超え、平成卒OB数も年々飛躍的に増えているだけに、こういう舞台に若いOBが積極的に参加して男声合唱全体を盛り上げて欲しいところだ。 余談ながら、私はこの作品を稲門グリークラブが1985年に演奏した時に歌っているし、故中田喜直氏と親しくしていただけに個人的にも感慨深く聴いた。今回私の同期(昭和31年卒)は1名だけ出演したが、彼が今回出演の最年長。私としては、この作品の演奏に出演出来なかったことに悔いを残した。
|