細かい情感を見事に表現、年輪がにじみ出た暖かいハーモニーの世界
平均年齢が75歳を超える自称“後期高齢者合唱団”「稲門グリークラブ・シニア会」は、老いて(失礼!)益々盛ん。第10回定期演奏会を、席数1200余を誇る「ティアラこうとう大ホール」で開催し、驚くべき集客数で先ず度肝を抜いた(10月3日午後)。 今回の目玉は作曲者の多田武彦氏が自ら指揮する男声合唱組曲「北国」(詩・丸山薫)。 この作品は早稲田大学グリークラブ第8回定期演奏会(1960年)で委嘱初演(指揮・磯部俶)されたが、どういう訳かその後演奏されることがなく幻の名曲になっていた。当時の学生指揮者・長澤護氏(当協会理事)らが中心になってこの名作の復活演奏気運を高める一方、多田氏も新たに“白い自由画”を追加作曲して5曲からなる組曲「北国」を完成した。 このステージは、初演を経験したメンバー約20名も加わって60余名がオンステし、この作品の持つ細かい情感を見事に表現した。加藤専務理事も学生時代に初演した一人で、この日は極めて真面目な表情で歌っていた。 長い年輪と人生経験を重ねた人たちの実に温かみのあるハーモニーが秀逸だったし、早いテンポの部分も全く乱れがなく、充分な練習が伺えた。メンバーはほぼ全員暗譜していたが、本番は多田氏の要請をいれて楽譜を持つことにしたという。長澤氏のテナーソロは、文字通り多田氏がイメージした通りだったに違いない名唱だった。 組曲「北国」は、1お山の学校、2お月様、3白い自由画、4まんさくの花、5山の媼の全5曲構成。多田氏には同じ丸山薫詩による「北国Ⅱ」がある。多田氏は男声合唱組曲を80近く作曲している文字通り男声合唱の神様的存在だが、久し振りにお会いしてその若々しさに驚いた。たしか、そろそろ80歳になられる筈だが…。 この日は他に「西岡瞳編曲によるポップスアルバム(芭蕉布、津軽のふるさと、しゃぼん玉、平城山、長崎の鐘、My Way)」と、過去10年を振り返る「振り返れば12年」(箱根八里など7曲)を、本当に楽しそうに幸せいっぱいの表情で演奏。もう一度冒頭のコピー、“老いて益々盛ん!”。10余年に及ぶ年齢の重ねを全く感じさせない不思議なおじ(い)さん達である。最高齢は96歳。石を投げれば80歳超のメンバーに当たる。 倶楽部グリーが賛助出演
今年も一世代若い早大グリーOB団体「倶楽部グリー」が1ステージ賛助出演し、丸山はるを氏編曲の洒落たポップスを楽しませた。2005年2月に正式発足した40名余のグループで、10日ほど前に初の単独演奏会を開催し、5年間歌い貯めた20曲余を完全暗譜で演奏したばかり。“日本一楽しい合唱団を目指す”と自称するだけに、爽快なリズム・美しいハーモニーに随時爆笑トークが会場を包み込み、こちらも本当に楽しく充実した演奏会でほぼ満員の盛況だった。後半はカラフルで若々しいコスチュームで観客の度肝を抜いた。(9月22日午後・国立オリンピック記念青少年総合センター大ホール)。【Latvija編集長 徳田浩】
倶楽部グリーの5周年記念演奏会ではピアノトリオが軽快なリズムを奏で、丸山氏がハーモニカをしんみり聴かせる場面も。終演後は現役さながらにストームで吼えた。
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